PR会社を選ぶとき、「どれくらいメディアとのコネクションがあるか」「有名企業の実績があるか」「テレビに出せるか」といった点を比較する企業は少なくありません。
もちろん、これらもPR会社を判断する材料の一つです。
しかし、約20年間PRの現場に携わってきた経験から、PR会社選びで最も重要なのは、単純なメディアネットワークや会社規模ではないと考えています。
PRには、そもそも大きな前提があります。
企業が発信したい情報と、メディアが取り扱いたい情報は必ずしも一致しない。
PRは魔法の杖ではありません。
どれだけコストをかけても、その情報をメディアが「取り扱いたい」と思わなければ、パブリシティを生み出すことは難しくなります。
だからこそPR会社には、企業が伝えたい情報をそのまま発信するのではなく、メディアやその先にいる生活者の視点から情報を捉え直す力が求められます。
そしてSNSが普及し、情報の流通経路そのものが大きく変化した現在では、メディア掲載だけがPRの正解でもありません。
この記事では、PR会社を選ぶ際に確認しておきたい7つのポイントを、実際のPR現場の視点から解説します。
PR会社とは?何をしてくれる会社なのか
PR会社とは、企業や商品・サービスに関する情報を、メディアや生活者、その他のステークホルダーへ届けるためのコミュニケーション活動を支援する会社です。
代表的な業務として、
- PR戦略の設計
- PR企画・ニュース開発
- プレスリリースの企画・作成
- メディアリレーション
- メディアプロモート
- 記者発表会・PRイベント
- SNS・インフルエンサー施策
- 動画・コンテンツ企画
- PR効果測定
などがあります。
ただし、こうした「何をやってくれるか」というメニューだけでPR会社を比較するのはおすすめしません。
なぜなら、本来PR会社が最初に考えるべきなのは、
「何をやるか」ではなく、「PRを通じて何を成し遂げるのか」
だからです。
PR会社を選ぶ前に「目的」を整理する
PR会社への相談で最初に整理すべきなのは、プレスリリースを出すか、記者発表会をするか、インフルエンサーを起用するか、といった施策ではありません。
企業がPRを通じて何を成し遂げたいのか。
ここを明確にすることが重要です。
例えば、
- 新商品の認知を拡大したい
- 特定のターゲット層に商品を知ってもらいたい
- 競合との差別化を図りたい
- 新しいカテゴリーとして市場で認識されたい
- 企業そのもののブランドイメージを変えたい
- 商品の購入やサービス利用につながる情報接点を増やしたい
など、目的によってPRの設計は変わります。
この整理がないままPR会社へ相談すると、「プレスリリースを出しましょう」「記者発表会をしましょう」といったPRメニューの提案や、単発のPRアイデアに終始してしまう可能性があります。
PR会社を選ぶ際には、施策を提案してくれる会社なのか、それとも自社の目的そのものを一緒に整理してくれる会社なのかを見ることが重要です。
PR会社の選び方|7つの比較ポイント
3-1. 「企業が伝えたいこと」を第三者が興味を持つ情報へ翻訳できるか
PR会社の力量が最も表れる部分の一つが、企業の情報を第三者の視点へ翻訳する力です。
企業が発信したい情報と、メディアが取り扱いたい情報は必ずしも一致しません。
企業側からすると、「新商品を発売しました」「新機能を追加しました」「新しいサービスを開始しました」という情報は重要です。
しかし、メディアの編集者や記者は、「なぜ今、この情報を取り上げる必要があるのか」という視点で情報を見ています。
そこには、
- 社会性
- 新規性
- 時流
- 意外性
- 季節性
- データ
- 社会課題
- 生活者の変化
など、第三者がニュースとして評価する理由が必要です。
だからこそPR会社に求められるのは、企業の言いたいことをそのままプレスリリースにすることではありません。
企業が発信したいことを、メディアの編集者や記者が「取り扱う意味のある情報」へ翻訳すること。
この「翻訳力」は、PR会社を選ぶうえで非常に重要な判断基準だと考えています。
伝えたい情報商品・機能・サービス
情報へ翻訳社会性・新規性・時流・データ
3-2. PRの目的から戦略を設計できるか
優れたPR会社は、相談を受けてすぐに施策を決めるのではなく、
- なぜPRをするのか
- 誰に届けたいのか
- その人にどのような認識を持ってもらいたいのか
- その結果、事業として何を実現したいのか
を整理します。
ここが曖昧なままだと、PR活動が「メディア掲載を獲得すること」そのものを目的化してしまいます。
テレビに出た。Webメディアに掲載された。広告換算額が○億円になった。
これらはPR活動の結果を示す一つの指標ではありますが、本来の事業目的が達成できているとは限りません。
PR会社を選ぶ際には、「何件掲載させます」という話より先に、自社がPRで何を実現したいのかを深く聞いてくれるかを見ることをおすすめします。
3-3. パブリシティだけに執着していないか
かつて企業PRにおいて、テレビ、新聞、雑誌などのマスメディアは圧倒的な情報発信力を持っていました。
しかし、SNSが広く普及した現在、情報環境は大きく変化しています。
Instagram、X、TikTok、YouTubeなどを通じて個人や企業が直接情報を発信できるようになり、SNSの影響力は相対的に高まっています。
一方で、マスメディアやWebメディアだけが生活者の認知や意思決定を左右する時代ではなくなりました。
もちろん、第三者であるメディアから取り上げられることによる信頼性や社会的なインパクトは、現在でもPRの大きな価値です。
重要なのは、パブリシティを目的化しないことです。
ターゲットによっては、
- メディア露出よりもインフルエンサーの方が届く
- SNS上でユーザーが話題にする仕掛けの方が効果的
- 動画コンテンツから検索へ誘導する方が適切
ということもあります。
つまり、「どのメディアに出すか」から考えるのではなく、「ターゲットへどう情報を届けるか」から考える。
PR会社には、この視点がこれまで以上に求められています。
3-4. ターゲットの解像度が高い提案ができるか
PR会社から提案を受けた際、ぜひ確認してほしいのが「ターゲット」です。
「20〜40代男女」「ビジネスパーソン」「子育て世代」といった属性だけでは、ターゲットを理解したことにはなりません。
その人が、
- どこで情報を知るのか
- 普段どんなSNSを見ているのか
- 誰の発言を信頼しているのか
- どんなキーワードで検索するのか
- 購入前に何を比較するのか
- どんな情報なら誰かに共有したくなるのか
ここまで解像度を高めて初めて、適切な情報の届け方を考えることができます。
その結果、MEDIA / SNS / KOL / EVENT / VIDEO / WOM / ADなどの中から必要な手段を組み合わせる。
メニューからターゲットを考えるのではなく、ターゲットからメニューを考える。
これがPR会社の提案力を見る一つの基準になります。
持ってもらうか
事業成果へ認知・理解・行動
3-5. 「バズらせます」と簡単に言わないか
PRやSNSの相談では「バズを起こしたい」という要望も少なくありません。
しかし、バズを意図的かつ確実に作り出すことは非常に困難です。
一方で、「バズは狙えないから何もしない」という考え方も違うと私たちは考えています。
新しい企画、意外性のあるコラボレーション、ユーザーが参加したくなる仕掛け、SNSで共有したくなる体験、世の中の関心と企業の情報を結びつけるニュース。
こうした新しい取り組みを継続的に行わなければ、大きな情報波及が生まれる可能性もありません。
PRには広告よりも不確実性があります。
しかし、その不確実性があるからこそ、ひとたび社会の関心と企業の情報がうまく結びつけば、広告予算だけでは生み出せない規模で情報が広がる可能性があります。
PRは再現性100%の施策ではない。しかし、成功したときのレバレッジが非常に大きい。
この特性を理解したうえで、継続的に新しいチャレンジを提案できるPR会社かどうかも重要です。
3-6. 提案する人と実行する人を確認する
PR会社選びでは会社の実績だけでなく、「実際に誰が担当するのか」を必ず確認することをおすすめします。
大手PR会社の特徴
大手PR会社には、多くの人材や部署があり、大規模なプロジェクトを実行できる組織力があります。
予算規模が大きいプロジェクトであれば、経験豊富なメンバーを複数アサインしたり、メディア、イベント、SNS、インフルエンサーなど幅広い施策を同時に実行したりできることは大きなメリットです。
一方、多数のスタッフを抱えているため、提案時のシニアメンバーと、契約後に実際の業務を担当するメンバーが異なるケースがあります。
その結果、提案のクオリティと実際のプロジェクト遂行能力にギャップが生じる可能性については確認しておく必要があります。
中小PR会社の特徴
中小規模のPR会社では、プレイングマネージャーが直接提案から実行まで担当するケースが比較的多くあります。
そのため、「提案した人=実際にプロジェクトを動かす人」となりやすく、提案と実行のギャップが少ないことはメリットです。
一方、大規模な記者発表会や全国規模のキャンペーンなど、多くのスタッフを必要とするプロジェクトでは、社内リソースが不足する可能性があります。
つまり、大手と中小のどちらが優れているという話ではありません。
プロジェクトの規模・予算・必要な専門性に対して、適切なチームを組成できるかを見ることが重要です。
3-7. PRの成果を「広告換算額」だけで評価していないか
PRの成果指標として長く使われてきたものの一つが、メディア露出を広告料金に換算する「広告換算額」です。
分かりやすい数字ではありますが、広告換算額だけでPRの成果を評価することには限界があります。
例えば100万人に届くメディアへ掲載されたとしても、その100万人が商品・サービスのターゲットでなければ、事業へのインパクトは限定的かもしれません。
反対に、閲覧者数は少なくても、ターゲットとなる意思決定者が多く見ている専門メディアであれば、大きな価値を持つ可能性があります。
PRの目的によって、
- メディア掲載
- SNSでの波及
- 指名検索
- Webサイト流入
- 問い合わせ
- 商品理解
- ブランド認知
- ブランドイメージ
- 購買・利用意向
など、見るべき指標は変わります。
PR会社を選ぶ際には、「どれだけ露出できるか」だけではなく、「何を成果として評価するのか」まで一緒に設計できるかを確認することが重要です。
大手PR会社と中小PR会社、どちらを選ぶべきか
| 比較項目 | 大手PR会社 | 中小PR会社 |
|---|---|---|
| 大規模案件への対応 | ◎ | △ |
| 多様な施策の実行力 | ◎ | ○ |
| 人的リソース | ◎ | △ |
| 提案者の実務関与 | △〜○ | ◎ |
| 提案と実行の一貫性 | △〜○ | ◎ |
| 柔軟性 | ○ | ◎ |
これはあくまで一般的な傾向です。
最終的には会社規模ではなく、「自社の目的に対して、誰が、どのような体制で、何を考えて動いてくれるのか」で判断することをおすすめします。
PRは「魔法の杖」ではない
PR会社へ依頼すれば、必ずテレビに出られる。
プレスリリースを出せば、必ず記事になる。
企画を実施すれば、必ずSNSでバズる。
残念ながらPRにそのような保証はありません。
企業が発信したい情報と、メディアや生活者が知りたい情報の間には必ずギャップがあります。
そのギャップを理解し、企業の情報を第三者の視点から翻訳し、ターゲットに合わせて最適な情報流通を設計し、新しい取り組みに継続的にチャレンジする。
それがPR会社の重要な役割です。
PRは広告に比べれば、不確実性の高い取り組みです。
一方で、企業の情報がニュースとなり、メディアからSNSへ、SNSから口コミへ、さらに検索へと広がれば、当初の投資を大きく上回る情報波及を生み出す可能性があります。
だからこそ、PRを軽視するべきではありません。
まとめ|PR会社は「どこに出せるか」だけで選ばない
PR会社を選ぶ際には、有名メディアへの掲載実績や会社の規模だけで判断するのではなく、「自社の目的を理解し、情報が届く仕組みを一緒に設計できる会社か」という視点を持つことが重要です。
特に確認したいのは、以下の7つです。
- 企業が伝えたいことを第三者が興味を持つ情報へ翻訳できるか
- PRの目的から戦略を設計できるか
- パブリシティだけに執着していないか
- ターゲットの解像度が高い提案ができるか
- PRの不確実性を理解しながら新しい挑戦を提案できるか
- 提案者と実行者の体制が明確か
- 広告換算額だけではなく、目的に応じた成果を設計できるか
株式会社レターズでは、PRを単なるメディア露出の獲得とは考えていません。
企業がPRを通じて何を実現したいのかを起点に、メディア、SNS、インフルエンサー、イベント、動画、口コミなどを組み合わせながら、「どこに出すか」ではなく、「どう届くか」をデザインする。
それが私たちの考えるPRです。
PR会社選び・PR戦略について
お悩みの方へ
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といった段階でもご相談いただけます。
株式会社レターズでは、決まったPRメニューを当てはめるのではなく、まず企業がPRを通じて何を実現したいのかを整理するところから支援しています。
